肩と股関節は「対」である。プロが教える全身連鎖の総仕上げ — 根本改善への最終回答 —
「肩の痛みが治ったと思ったら、次は腰や股関節が……」
「どこへ行っても『様子を見ましょう』と言われるだけで、一向に変わらない」
もしあなたがそんなループに陥っているなら、それは「体の一部」しか見ていないからかもしれません。
これまで、肩の「吸盤作用」や股関節の「エンジン機能」についてお伝えしてきました。今回はその集大成として、肩と股関節を一つのシステムとして捉える「全身連鎖(キネティック・チェーン)」の重要性について、鍼灸師・スポーツトレーナーの視点から解説します。
【プロの独り言】臨床現場で見える「肩の痛み」の共通点
実際の臨床現場で多くの患者さんと向き合っていると、肩を痛めている方には、ある顕著な共通点があることに気づきます。
それは、「姿勢が著しく崩れている」こと、そして驚くほど「殿筋(お尻)周りの筋肉がガチガチに緊張している」ことです。
しかし、ほとんどの方は「肩が痛いんだから、肩をどうにかしてほしい」と考え、肩だけの解決策を求めてしまいます。もちろん、肩の治療は不可欠ですが、お尻の緊張を放置したままでは、せっかく肩を整えても、歩き出す瞬間にまた下から引っ張られ、元の痛みに引き戻されてしまうのです。
1. 肩は「屋根」、股関節は「土台」という真実
家を想像してみてください。屋根(肩)が歪んでいるとき、原因は屋根そのものにあることもありますが、多くは土台(股関節・骨盤)が傾いていることにあります。
股関節は人体で最も強力な筋肉が集まる「パワーの源」です。ここが正しく機能し、衝撃を吸収するサスペンションとして働かない限り、その負担はすべて「肩」や「腰」といった繊細な関節に跳ね返ってきます。
2. 運動連鎖:体の中を走る「バトンの受け渡し」
私たちの体は、歩く、走る、物を持ち上げるといった動作の際、足裏から指先までエネルギーをバトンのように受け渡しています。
- 右の股関節が蹴り出した力は、対角線上の左の肩へと伝わる。
- 股関節が回旋のブレーキをかけることで、肩はスムーズに加速する。
この「バトンの受け渡し」がどこかで途切れたとき、そのしわ寄せが「痛み」として現れます。つまり、肩が痛いのは、肩がサボっているのではなく、「他の場所がサボった分を、肩が一人で背負い込んでいる」状態なのです。
3. なぜ「鍼灸」と「トレーニング」のセットが必要なのか?
「整える(鍼灸)」だけでは足りません。かといって「鍛える(トレーニング)」だけでも不十分です。
- 抑制(鍼灸):
まずは、連鎖を邪魔している「固結び」のような筋肉(腸腰筋や小胸筋など)を鍼や徒手で緩めます。これでバトンを受け渡せる状態に戻します。 - 再教育(トレーニング):
緩めた後に、正しい連動性を脳に教え込みます。股関節をどう使い、肩をどう安定させるか。この「動かし方の再インストール」がなければ、体はすぐに元の痛い使い方に戻ってしまいます。
4. セルフチェック:あなたの連鎖は繋がっていますか?
鏡の前で「片足立ち」をしてみてください。
- 骨盤が横に流れていませんか?
- 肩がすくんでいませんか?
もしバランスを崩すようなら、あなたの「土台」と「屋根」の連携はスムーズではありません。でも安心してください。構造を理解し、正しい順序でアプローチすれば、体は何歳からでも変わります。
5. まとめ:一生モノの「動ける体」を手に入れるために
痛みを取ることはゴールではありません。痛みが出ない、そして今まで以上にスムーズに動ける「新しい自分」に出会うこと。それが、私が提供するコンディショニングの真の目的です。
「もう年だから」「体質だから」と諦める前に、あなたの全身の連鎖を一度繋ぎ直してみませんか?
執筆:鍼灸師・スポーツトレーナー

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